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笹幸恵
2016.9.13 07:46

自衛隊って、一般企業と同じなの?

20年前、私は自衛官になりたいと思っていました。

最前線に出て、屈強なオトコの部下を従えて・・・

うほほ、気分はジャンヌ・ダルクです。

オトコにできて、オンナにできないことはない!

と、世間知らずのこまっしゃくれたガキは

本気でそう思い込んでいました。

 

ところが。

自衛隊の取材をするようになって、その思い込みは

あっさり覆されました。

とくにレンジャーの訓練を間近で見たときです。

「女には無理だ」と思いました。

 

レンジャーでなくても、女にはいろいろな制約があります。

生理があり、生理に伴う体調の変化があり、

男性の中で素っ裸になって同じ風呂には入れません。

まず自分のメンタルを「オトコ化」しなければ、やっていけません。

しかし、たとえ自分が外見も言動も「オトコ化」したところで、

性転換でもしない限り中身はオンナですから、

自分の意志に関わりなく性的な対象で見られることもあります。

体力面においては何をかいわんや。

ここで申し上げたいのは、軍隊とは、基本的に

男性が中心にならなければ戦えない、ということです。

 

しかし時代は変わりました。

女性を排除するのではなく、男性と同じように受け入れて、

同じようにがんばってもらう。

平時でも、軍隊には様々な職種があります。

通信や補給など、女性のほうが向いているのではないかと

思う仕事はたくさんあります。

それどころか、護衛艦では女性の艦長まで出てきています。 

60年以上「平時」が続いた自衛隊では、

女性にやさしい組織制度になっているとも言えます。

立て続けに子供を産んで、そのたびに産休と育休を取り続けて

いる人もいます。それでも公務員ですからクビにはなりません。

異動が多い幹部自衛官の女性は、出産すると大変ですが、

祖父母の手を借りて何とかがんばっています。

 

セクハラが全くないとは言いません。

しかし多くの男性自衛官は、女性がいることをごく自然に

受け入れています。どんな組織も、男性がいて、女性がいて、

相互補完的であるほうがはるかに雰囲気も良くなります。

しかしそれでも申し上げたいのは、軍隊とは、基本的に

男性が中心にならなければ戦えない、ということです。

 

「最大の壁は根強く残る男性中心の働き方の文化だ」

と、安倍首相は自衛隊の高級幹部会同でおっしゃったそうです。

突っ込みどころ満載です。

男性中心? 戦う組織なんだから当たり前でしょ。

働き方って・・・戦い方の間違いじゃなくて?

女性の味方のフリしとけば、とりあえず好感度アップとでも?

女性・女系天皇を認めようとしない安倍首相が、

どの口で女性活躍社会などと言うのか。

かねてから不思議に思っていましたが、自衛隊を一般的な

社会通念に当てはめるにいたっては、どこをどう交通整理すると

そうなるのか、皆目見当がつきません。

 

自衛隊は国防を担う組織でしょ?
私は女だからはっきり言いますが、自衛隊で女性が
バリバリ活躍するようになったら、はっきり言って有事の際、戦えません。

最高指揮官である安倍首相は、自衛隊をどこかの一般企業と

同じだと思っていらっしゃるようです。

 

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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